2021年 12月登山の日「雪踏みて 冬晴れの青き 空目指す」

 

12月登山の日

 

おすすめの山「八ヶ岳 杣添尾根」

今月は八ヶ岳の東面から登る杣添尾根を紹介しましょう。
八ヶ岳の冬期は雪山の入門として赤岳鉱泉や唐沢鉱泉のある西面からよく登られます。東面の主な尾根には天狗尾根・県界尾根・杣添尾根がありますが、雪山テント泊・基本技術の入門としては杣添尾根が優れています。
 
自分たちで雪を踏み分け、時にはラッセルに苦しみながら登高すると、頂上近くから展望が広がり、赤岳や権現岳から伸びる尾根の姿に魅了されることでしょう。何よりも登山者が少ないので、すべて自分たちで雪山に対峙することが出来ます。
 
今年、杣添尾根で皆さんも自らの力で雪山に対峙してみませんか。

 

 

おすすめのコース

 

【行程】
1日目 海ノ口横岳登山口-林道交差-2262mから2438mの樹林帯でテント設営
2日目 テント設営地点-三叉峰‐横岳(往路を下降)

 
【コースの特徴】
登山口から樹林帯を林道との交差部まで進み、そこからひと登りで杣添尾根に乗りあがります。樹林帯は夏の切り開きにも助けられ、迷うことなく進むことが出来ますが、八ヶ岳の東面は北西から吹き付ける季節風に雪が運ばれるので積雪量が増大します。登山者も少ないこともあり、早々にラッセルとなるでしょう。

樹林帯が切れる地点から尾根は細くなります。転滑落の危険性は少ないですが注意して進みましょう。やがて尾根が斜面に消えて、ハイマツ交じりの急斜面となります。ここは条件が整えば雪崩の危険性があるので判断を誤らないようにしましょう。降雪中・直後は躊躇なく登山を中止しましょう。

稜線に上り詰めれば三叉峰に飛び出します。岩混じりの稜線を少し頑張ると横岳の奥の院に到着です。条件が良ければ360度の展望が待ってます。
 

杣添尾根 上部

 
 

横岳奥の院から見た富士山

 
 

八ヶ岳のブロッケン現象

 
 
 

雪山安全登山の基礎知識

 
先月の雪山に必要なギアの知識に続いて、今月は困難な状況に応じたウエアリング・手袋のレイアリングについてお伝えします。
 
 

<低体温症を防ぐレイヤリング術>

 
低体温症は寒気に長時間さらされると発症します。低温に加え、強風・衣類の濡れが発症を加速させます。凍傷の発症は-4℃以下の寒冷刺激にさらされた時に発症します。発症には風力、湿度、寒冷曝露(ばくろ)時間、服装が関係します。注目していただきたいのが、共に【濡れ】がその要因となっています。近年は暖冬傾向ですから、南岸低気圧の通過に伴う湿雪や標高の高い山の降雨等、通常では考えられない事態にさらされる事が多くなりました。十分な準備で冬山に向かいましょう。
 
 

1.ベース(インナー)レイヤー

湿気を吸収、吸着熱を発して、保温性に優れるメリノウールのベースレイヤーの下に、化繊の吸汗速乾アンダーを着用するとさらに濡れに強く快適です。

 

2.ミドルレイヤー

フリースは保温・透湿性能共に行動に適しているので、おすすめですが嵩張ります。そこで、はっ水・防風の薄手のミッドシェルを活用して、森林限界まではミッドシェル・ベースレイヤーを組み合わせで行動して、森林限界以上は撥水ダウンを使ったインナーダウンを着用すると、濡れに強く携帯時にかさばらず便利です。

 

3.アウターレイヤー

冬山は思わぬ降雨による濡れや過冷却水による凍結等、厳しい条件に耐える防水透湿素材ジャケットに加えて、状況に応じて脱ぎ着のしやすいサイドジッパーを備えたオーバーパンツがお勧めです。

 

4.防寒着

休憩時やテント泊・クライミングのビレイ時などコンパクトで暖かいダウンジャケットは必携です。濡れに強い撥水加工の高品質ダウンを選びましょう。

 
低体温症を防ぐためには風・濡れを防ぐ効果的なレイヤリングに加え、十分なカロリー補給。現地の情報(気温、雪量、風速など)を収集して、充分な装備を準備しましょう。
 
 

<手足の凍傷を防ぐために>

 
凍傷は寒冷からの保護に加えて、濡れた状態に強風を受けると凍傷の危険性が高くなるので、濡れた衣服・グローブなどは直ぐに交換しましょう。また、凍傷は患部が白くなって、疼くような痛みを覚える初期段階で、ぬるま湯につける。入念にマッサージするなどの処置を施しましょう。
 
 

1.手袋

手袋も凍傷を防ぐためにインナーグローブ+ウールグローブ+オーバーグローブとレイアリングすると効果的です。特にインナー・ウールグローブは必ず予備を用意して濡れに備えます。

 

2.靴・靴下・ゲイター(スパッツ)

濡れ、強烈な寒気に対応できるワンランク上の保温性を備えた靴が必要です。靴下は良質のメリノウールは当然ですが、インソールを断熱性の高いものに取り換えるのも効果的です。加えて雪の侵入を防ぎ・保温性を高めるゲイター(スパッツ)は冬用のバンドに強度のあるものを選びましょう。フロント開閉タイプは着脱がしやすくてお勧めです。

 


 
冬は自然の厳しさと美しさを兼ね備えたすばらしい時期ですが、日没も早く、山麓では汗による濡れ、稜線では風と氷点下以下の低温と、気温の変化に対応しやすいウエアリングを考える。温かい高カロリーの飲み物の準備等、綿密な登山の準備が必要です。
 
皆様がすばらしい登山をされる事を石井スポーツスタッフ一同願っております。
 
 

今月おすすめの登山用具