2021年 11月登山の日「光みなぎる 雪の山 登路一目瞭然」

 

11月登山の日

 

おすすめの山 「阿弥陀岳」

今月は八が岳の阿弥陀岳を紹介しましょう。
八ヶ岳は冬期に営業されている山小屋が多いので、雪山入門に良い山域ですが、急峻な山容から冬期登攀の優れたルートもたくさんあります。今回は冬期に登攀ルートから登られることが多い阿弥陀岳を紹介します。
 
阿弥陀岳の冬期登攀ルートとしてポピュラーなのは阿弥陀の北稜でしょう。行者小屋をベースに赤岳の主稜や横岳の石尊稜などと組み合わせてよく登られます。この北稜と対をなすのが南稜です。広河原側からアプローチとなるため、通常1ビバークで登られることが多く、登攀力に加え、冬の生活能力も求められる、将来長大な登攀ルートを攀じる基礎を身につける最初のステップになるでしょう。
 
今年、冬の阿弥陀岳に広河原沢側から、みなさんも訪れてみませんか。

 

おすすめのコース(入門とはいえ、厳しいのでこころして登りましょう)

 

【行程】
1日目 舟山十字路-立場山-青なぎ-P3(雪が多いときはP3まででビバークとなる)阿弥陀山頂(ビバーク)
2日目 阿弥陀山頂-御小屋尾根下降(途中中央稜に入り下降することも出来る)-舟山十字路

 

 
【コースの特徴】
舟山十字路から旭小屋から回り込んでも登れますが、現在は広河原沢沿いの林道を辿り、テープを目印に立場岳の稜線に登ります。(この部分は事前に良く調べましょう)青なぎからはこれから登る岩稜と広河原沢のルンゼにかかる氷瀑が観察できます。
 

阿弥陀岳広河原沢左俣のアイスクライミング

 
この先ルートは雪稜岩稜と進み、P3の基部からルンゼにトラバースします。ここのバンドからロープを出して慎重に行きましょう。ルンゼは雪が少なければワイヤーが出ているのですぐわかります。出だしが少し難しいので慎重にこなして約2ピッチで稜線に出ます。なお降雪直後は雪崩の危険が高いので、判断力が必要です。あとは岩稜を快適に登ると阿弥陀の頂上です。
 

阿弥陀岳中央稜の上部

 
頂上は意外に広く、上手く窪地を整地すると快適なビバークポイントになります。下降ははじめ岩場なので慎重に行きましょう。御小屋尾根の樹林帯に入ると一安心。なお中央稜に入る場合は急峻な下降が続くので慎重に下降しましょう。
 

阿弥陀岳頂上の夜明け

 

阿弥陀南稜で出会ったカモシカ

 
 

11月には冬山の準備を始めましょう

 
雪山で使用するギア・ウエアは装着やメンテナンス・困難な状況に応じたウエアリング・手袋のレイアリングと準備に時間が必要です。本格的な雪山シーズンを迎える前に準備万端整えるのが、余裕をもって雪山を楽しむ秘訣です。今回はピッケル・アイゼン・アバランチギアの基礎知識を皆様にお伝えします。
 
 

<ピッケル>

 
岳人の魂と言われるピッケルですが、歩行時のバランス確保・滑落停止や確保支点等、雪山でこれほど多用途に使えるギアはないでしょう。現在、目的別に4タイプが販売されてます。
 
 

1.マウンテニアリングアックス

クラッシックな雪山から雪壁・岩稜登攀までオールラウンドに使用するモデル。

【ピッケル選択の基礎知識】

雪山から雪壁・岩稜登攀までオールラウンドに使用するモデルはブレード・ピック共にシャープで強度のある(タイプB以上)を選びましょう。シャフトの長さはヘッドを握って、体側に添わせて直立した時にくるぶしに来る長さが標準。岩稜・雪稜で主に使う場合は60㎝前後が使いやすく、重荷背負う冬期縦走の場合は下降の安全性を考えて石突が床につく長さを選ぶと良いでしょう。
※マウンテニアリングアックスのシャフトのカーブについて
マウンテニアリングアックスのシャフト形状はカーブが付いたモデルが主流となり、むしろストレートシャフトモデルはスノーウォーキング・スキーマウンテニアリング用モデルにほぼ限られてきています。シャフトの形状はピッケルテクニックと連動しているので、連動したテクニックで使用しないと機能を発揮できないので注意が必要です。

 

2.ウォーキングアックス

主に氷河上等、歩きが中心の雪山用。アイスステップや雪庇の乗越に使用するモデル。

【ピッケル選択の基礎知識】

北八ヶ岳に代表される雪上歩行で使うモデルは、軽量で石突が床につく長さを選ぶ。山岳スキーも行い、雪山で使用できるストックを持っているときはシャフトが短めで、急斜面を登る用途に使うスキーマウンテニアリングモデルを選べば兼用出来て使い勝手が良いでしょう。

 

3.アイスクライミング/テクニカルマウンテニアリングアックス

急傾斜のアイスクライミングやオーバーハングしたアイス・ドライツーリング用のテクニカルルートで使用するモデル。

【ピッケル選択の基礎知識】

冬期のテクニカルな登攀ルートにおいてアイスセクションやドライツーリングセクションだけでなく、急峻な雪壁まであらゆる状況下で使いやすいタイプ。長さはほぼ50cmで共通。近年ではオーバーハングをドライツーリングで登り、岩壁から一筋垂れ下がる氷柱に乗り移る等、非常に高難度なルートを登るための高難度ドライツーリング・アイスクライミング専用のモデルも多くなりました。

 
 

<アイゼン>

 
アイゼンも次の2タイプに分類されているので、用途に合ったものを選びましょう。主にシティー用途だったチェーンアイゼンですが、軽量で装着が簡単なものが増えて、林道のアプローチなどで積極的に使う人が増えてきました。アイスクライミングのアプローチでアイゼンの爪を破損消耗させない目的で使う人もいます。
 
 

1.マウンテニアリング ・スキーツーリング用アイゼン

雪上の歩行・氷化した斜面・凍てつく岩稜・岩壁でオールラウンドに使用できるアイゼン。スキーツーリング・残雪の雪上歩行用に軽量なアルミを使ったモデルもある。

 

2.アイスクライミング用アイゼン

垂直の氷柱や、垂直からオーバーハングの岩場を登るためのアイゼン。フロントポイントがモノ(一本)のタイプが主流。
※アイゼンと靴の形状に相性があるので、購入時は登山靴をお持ち下さい。

 

3.チェーンアイゼン

踏みしめられた雪道や氷化した林道など降雪の少ない山では6本爪アイゼンより安定して歩けます。氷化した道に降雪があれば、雪団子がついて高下駄状態になるので雪をこまめに落としましょう。

 

雪崩対策装備

 
近年雪崩対策用具(雪崩ビーコン・プローブ・ショベル)が大変使いやすくなりました。 雪山に向かう際は、携行するが常識と言われています。しかし雪崩ビーコンは高価でもあり、命を託すたいせつな機器です。各装備を準備するポイントを整理しましょう。
 

雪崩ビーコン(アバランチトランシーバー)

雪崩に埋没した際に、機器から発信される電波を受信して埋没点を特定します。 発信周波数は457kHzで世界共通です。発信は1本のアンテナ、受信は3本のアンテナで行う雪崩ビーコンが標準です。
現在 埋没した人までの距離をデジタル表示するだけでなく、自分が埋没したときにより早く探索されるように、発信アンテナの方向を自動的に切り替えるなど各社は工夫を凝らしています。 機能的には各社ともに一定の水準に達しています。自分の雪崩ビーコンの特性をよく理解して、捜索訓練をする事が重要です。
既にお持ちの方はビーコンのソフトウェアアップデートがされていないかシーズン前に確認しましょう。

 

ゾンデ(プローブ)・ショベル

雪崩ビーコンだけでは埋没者を救出出来ません。プローブは雪の中に埋没している場所を特定するのに使います。長さは300センチが標準で、径が太くて、埋没深を確認しやすい目盛を刻んである物を選びます。引き伸ばすのにコツが必要ですから、公園などで訓練をしましょう。ショベルは素早く埋没した人を救出する重要な用具です。ショベルを有効に使えば、埋没深が1mでも10分程度で救出出来ますが、手で掘れば1時間以上かかるというデータがあります。 軽量でも十分な強度のあるショベルを選びましょう。

 

<そもそも雪崩に合わないために>

 
埋没した人を助けるのに重要な役割を持つ雪崩対策装備ですが、天候を把握して、危険性の増大する大量の降雪や気温の急激な変化が観測された時は入山を控える。地形図をよく見て、より雪崩に遭遇しない登路を検討する。登山中の積雪や雪崩の発生状況などの現地観察がより安全な登山につながります。アバランチギアは雪崩ビーコン・プローブ・ショベルの3つが揃って初めて雪崩に対処することができます。
 
皆様がすばらしい登山をされる事を石井スポーツスタッフ一同願っております。
 
 

今月おすすめの登山用具